詩人、野口雨情

磯原小唄

天妃山から ハ 東をネ
東をみれば(テモ ヤレコラサ)
「見えはしないが見えたなら」
あれはアメリカ チョイト 合衆国

二つ島でも ハ 世間をネ
世間をかねて(テモ ヤレコラサ)
「顔を見合せ朝夕に」
はなればなれに チョイト 暮すもの

尾形山には ハ 松の木ネ
松の木ばかり(テモ ヤレコラサ)
「誰を待つのか知らないが」
待つはおよしよ チョイト つらいから

名さへ響いた ハ 茨城ネ
茨城炭の(テモ ヤレコラサ)
「ここは磯原 海のはた」
山と海とで チョイト 夏知らず
わたしや心は ハ 火よりもネ
火よりもあつい(テモ ヤレコラサ)
「来れば来るほど温泉の」
湯ではなけれど チョイト さめやせぬ

川は大北 ハ 川ならネ
川なら海へ(テモ ヤレコラサ)
「たとへ涸れても細ろとも」
水の流れは チョイト 絶えやせぬ

上野朝出りや ハ 日帰りやネ
日帰りや楽よ (テモ ヤレコラサ)
「どうせ来るなら磯原へ」
帰す帰るは チョイト 後のこと


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